大室山 (丹沢)
大室山(おおむろやま、地形図では「おおむろざん」)は、丹沢山地北部の山梨県と神奈川県の境にある標高1,587 mの山。かつては「大群山(おおむれやま)」と呼ばれていた。堂々とした山容から「富士隠し」の異名を持ち、「大室権現」を祀る信仰の山である。山梨百名山に数えられており、神奈川県側は丹沢大山国定公園に指定されている。
大室山の山頂は、山梨県道志村と神奈川県相模原市緑区の県境をなす甲相国境尾根にある。山頂付近は落葉広葉樹林に覆われ、山頂自体の展望は乏しい。一方、道志村・相模原市と神奈川県足柄上郡山北町の3自治体が接する地点が山頂から少し離れた西ノ肩にあり、山北町の境界線に沿って丹沢主稜の縦走路が通る。
大室山・大群山の名前の由来は不明であるが、ムレ(牟礼)が古代朝鮮語で山を意味することに由来するという説もある。
自然
地質
丹沢山地は過去の海底火山(伊豆・小笠原弧)に起源を持ち、長期の造山運動と隆起・侵食を経て形成されたため、地形が低山の割に急峻で複雑である。大室山周辺の地質は、丹沢層群上部(大山亜層群・唐沢川層、中新世)のグリーンタフ(緑色凝灰岩)などからなる。
植生
大室山はブナを主体とした自然林に覆われている。4月下旬に山頂付近でマメザクラやキクザキイチゲが見られる。5月にツツジ類が開花し、整備された木道沿いにトウゴクミツバツツジやヤマツツジが見られる。夏には、ニホンジカに採食されにくい植物としてオオバイケイソウ、マルバダケブキ、トリカブトなどが見られる。
安藤・持田(2008)の調査によれば、大室山山頂とその周辺では高木層の優占種としてブナ、オオイタヤメイゲツ、サワシバ、サワグルミ、コハウチワカエデなどが記録され、亜高木層ではトウゴクヒメシャラが優占する例が示された。低木層ではエゴノキが複数の調査区で優占し、ニシキウツギ、カマツカ、ミヤマイボタ、オオカメノキ、ミヤマザクラなども出現し、サルナシ、ヤマブドウなどの蔓植物が多い地点もある。草本層ではヤマトリカブト、シロヨメナ、ヤマミズ、ミヤマタニタデのほか、テンニンソウ、ムカゴイラクサ、タチツボスミレ、コアカソなどが確認された。
神奈川県では、「丹沢ブナ林再生指針」に基づき大室山が再生優先地とされている。丹沢大山国定公園の公園計画書では、大室山において「登山者の集中利用やニホンジカの採食圧により、山頂部の裸地化や土壌の侵食が進んでいる」ことを挙げ、自然再生のための施設整備を位置づけている。ブナ林再生のため、大室山周辺等で植生保護柵の設置や土壌保全工が実施されている。
道志水源林